
どこの住宅にもあるキッチンには出火要因1位にあげられるコンロがあり、多くの火災リスクが潜んでいます。その中でも意外と知られていないチェックポイントは、調理時の煙等を排出する換気扇、いわゆるレンジフード部分にもあります。
レンジフードの幕板を外すと、空気を運ぶためのファンと外壁をつなぎ、空気の通り道となるダクトと呼ばれる部材が現れます。
このダクトと呼ばれる部材には火災のリスクが潜んでおり、意外と知られていないためきちんと理解し、事前に火災の予防ができるようにしておくと良いでしょう!
ダクトってどこにあるの
ダクトが火災のリスクになる理由とは?
そもそもダクトと一口に言っても、ダクトの形状から2種類のダクトに分けられます。
一つ目は蛇腹の形状になっているフレキシブルダクト(左下写真)、
二つ目は直管の形状になっているスパイラルダクト(右下写真)の二種類です。
フレキシブルダクトは人の手で簡単に曲げることができ、一般的にはトイレやユニットバスでのダクトとして使用されます。
一方でスパイラルダクトは曲がらず、フレキシブルダクトよりも分厚いため、耐久性が必要なキッチンに使用されます。
しかし、施工性が高いことから、キッチンでもフレキシブルダクトを使用しているケースが多くあります。
実はこの、キッチンでのフレキシブルダクトでの施工にこそ、火災のリスクが潜んでいます。
消防庁では火災を未然に防止できるよう火災予防条例という条例が定められており、各市町村ではこれを基に条例として規定されています。
火災予防条例
その火災予防条例の中には、ダクトに関する規定も明記されております。
一つの例として下記のように定められています。
東京消防庁 火災予防条例 抜粋
大きく分けて条例に記載されている火災予防のためポイントは3つ
条例ポイント① 材料に耐食性や強度が必要
ダクトの厚みと材質:板厚0.5㎜厚以上で亜鉛(orステンレス)の材質にしなければならない。
フレキシブルダクトの厚みは約0.1㎜程度が一般的で、フレキシブルダクトの材質がアルミの場合は材質も規定を満たしていないことになる。
火災のリスク
厚みや材質が規定を満たしていない場合、穴が開くなどして火災が広がるリスクがある。
表2(18,000kcal/H以下の厨房設備に附属する排気ダクト板厚)
円形ダクトの直径(mm) | 板厚(mm) | |
ステンレス鋼板 | 亜鉛鉄板 | |
300以下 | 0.5以上 | 0.5以上 |
300超750以下 | 0.5以上 | 0.6以上 |
750超1000以下 | 0.6以上 | 0.8以上 |
1000超1250以下 | 0.8以上 | 1.0以上 |
1250超 | 0.8以上 | 1.2以上 |
厨房設備に附属する円形排気ダクト板厚に係る火災予 防条例準則の運用について(通知)
条例ポイント② 断熱被覆が必要
断熱材の施工:可燃物との離隔距離が10㎝未満の場合断熱材巻きが必要。
断熱材が巻かれていないケースも多い。
配線等も可燃物にあたるため、ほとんどの現場で断熱材巻きが必要となる。
火災のリスク
ダクト内で火災が発生した際に、周囲に引火して火災が広がるリスクがある。
条例ポイント③ ダクト内の形状
ダクトの形状:ダクト内面を平滑にしなければならない。
火災のリスク
フレキシブルダクトは内面がジグザグで油溜まりから引火のリスクがある。


長年使用すると調理の際の油やほこりなどが溝に溜まり火災のリスクに
火災を予防するために確認するポイントは?
ダクトに関する火災のリスクを下げるためのポイントは、上記のような火災のリスクがあることを理解し、予防をしておくことです。
ダクトは、スパイラルダクトかつ断熱材が巻かれていることがリスクを下げるためには重要となります。
予防のためのダクト例
事前にやっておくと良いチェックリスト
- キッチンのダクトを何を使用しているかチェック!
- 建てる予定(住んでいる)市町村の火災予防条例をチェック!
- リスク予防としてスパイラルダクトと断熱材を選ぶ!
- 不明点は建設予定のメーカー等に確認をする!
前述の通り、火災予防条例は火災を未然に防ぐために定められているものではありますが、規定を満たしていなくても罰則等はございません。 そのため施工性の高いフレキシブルダクトが多く使用されているのが現実です。火災のリスクを少しでも減らすためには、きちんと内容を理解しておくことが重要となります。
今後戸建てをご検討される場合は、上記内容を参考に、火災に強い家を建てましょう。