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2回目の地震で倒壊!?地震対策の課題と制震装置
2回目の地震で倒壊!?地震対策の課題と制震装置

地震対策として有効な【制震装置】はご存じですか?建築基準法では耐震基準が定められており、「耐震」による地震対策が一般的ですが、大地震の際には+αの対策が有効ということが熊本地震の経験から分かっています。+αの地震対策として、【制震装置】を検討してみてはいかがでしょうか。

地震対策の課題とは

①基本の地震対策は「耐震」

地震対策として最も一般的なのは「耐震」です。建物全体を木材や金物(釘やビスなど)で補強して強度を上げ、地震の揺れに「耐える」構造にします。建築基準法には耐震基準があり、建物を建築する際必須となる地震対策です。

②2回目の地震で倒壊!?「耐震」の課題

地震対策は「耐震」だけで十分なのでしょうか。耐震基準による「耐震」は確かに地震対策として有効ですが、「繰り返しの地震を想定していない」という懸念点があります。建築基準法の耐震性に関する基本的な考え方は、「大地震の時に建物が倒壊して人命を損なわないようにする」というものです。つまり、1回目の地震で命は助かっても、2回目以降の地震で建物が損傷・倒壊する可能性があり、命の危険はもちろん、「住み続けられる家」であることは想定していないということです。

③熊本地震で見る「耐震」の現実

熊本地震の数字から、現在の耐震基準が「住み続けられる家」を想定しているものではないということが分かります。

(1)2回目の揺れで倒壊

熊本地震では倒壊した297棟のうち88.2%が2回目の揺れで倒壊しました。1回目の揺れには耐えても、2回目の揺れには耐えられなかった=繰り返しの揺れを想定していないということが伺えます。

※参考:国土交通省/国立研究開発法人建築研究所「熊本地震における建築被害の原因分析を行う委員会 報告書」
日本地震工学会論文集2019年19号1号「2016年熊本地震から2年経過した益城町市街地の被災建物の現況調査」

(2)修復できる損傷レベルでも建て替えられていた

修復できず、更地にして建て替えるしかない建物は27%でしたが、実際には約半数の54%が更地または建て替えられていました。耐震基準が「住み続けられる家」を想定していないということが伺えます。

※参考:国土交通省/国立研究開発法人建築研究所「熊本地震における建築被害の原因分析を行う委員会 報告書」
日本地震工学会論文集2019年19号1号「2016年熊本地震から2年経過した益城町市街地の被災建物の現況調査」

プラスの地震対策「制震」

①「耐震」に「制震」をプラスして安心の住まいに

繰り返す揺れにも対応し、「住み続けられる家」にするためにはどうすれば良いのでしょうか。設計を工夫することも一つですが(例えば、強い壁をバランスよく基準よりも多く配置するなど)プラスαの地震対策として「制震装置」の設置がオススメです。「制震」は揺れを吸収する地震対策です。繰り返す揺れにも効果を発揮するという特長があります。「制震装置」を設置することにより、基本の地震対策である「耐震」に「制震」の効果をプラスすることが可能です。

制震=揺れを吸収する

②どうやって選ぶ?「制震装置」の種類

具体的に制震装置の設置を検討する場合、何を基準に製品を選定すればいいのでしょうか。戸建て住宅向けの制震装置には以下のような種類があります。「粘弾性」は使用している高減衰ゴムがコスト高の原因となり、「液性」はメンテナンスが必要です。「塑性」(そせい)はコストは中程度でメンテナンスフリーのため、バランスが良いと考えられます。

                               ※区分は特許庁「特許出願技術動向調査報告書」(H22年)に基づく

③「塑性」の制震装置の特徴

「塑性」とは、力を加えて変形させたときにその力を取り除いても変形が残る性質です。塑性の制震装置とは、鋼材や樹脂といった塑性がある材質を変形させて成型している制震装置のことを指します。塑性の制震装置の特徴は、装置の伸縮を活かして地震エネルギーを吸収できる点です。中には、 阪神・淡路大震災の地震波を繰り返し10 回発生させても、ほぼ変化がないほどまで建物へのダメージを低減できる商品もあります。

地震対策の重要性

①どの地域でも大地震は起こりえる

今一度地震対策の重要性を見ていきましょう。日本では大地震の脅威からは逃れられません。今後30 年以内の大地震の発生率が公表されていますが、熊本地震は相対的に確率が低かった九州で発生しており、相対的に確率が低い地域でも安心はできません。それだけ地震の予測は難しく、どこに住んでいても油断は禁物です。

                    ※参考:地震調査研究推進本部
                       「活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧(2025年1月1日での算定)」

②地震の被害は広範囲に及ぶ

地震による被害は思っている以上に大きく、広範囲に及ぶものです。

経済的負担のことで言えば、東日本大震災で住宅再建にかかった費用は平均約2,500万円です。対して、被災者生活再建支援制度で受け取れる金額の上限は300万円。義援金約100万円と合わせても、約2,100万円不足することになります。

お金の調達で頼りにしたい地震保険ですが、地震保険で不足分を全額カバーするのは難しいのが現状です。例えば2,500万円の火災保険で契約できる地震保険は最大1,250万円。全損以外の被害では、受け取れる金額はさらに少なくなります。制震装置の設置をオススメするのは、万が一の住宅再建費用に備えるよりも、ずっとコストがかからず、その他被害も抑えることができるためです。家づくりを始める時の決断が、その後を大きく左右します。

※地震対策として制震装置を使用した場合の目安です。
 製品に製品により価格は異なります。
 地震被害が生じないことを保証するものではありません。 

※内閣府の防災情報ページより。
 東日本大震災で全損被害に遭った住宅の新築費用の平均。 

まとめ

日本に住んでいる限り、地震の脅威からは逃れることはできません。繰り返し受ける地震被害を最小限にするために、繰り返しの地震に効果を発揮する【制震装置】の設置を検討してみてはいかがでしょうか。

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